黒酢とは、一般の米酢が3ヶ月の発酵・熟成に対して、アルコールを一切使わず、通常よりも長期間(1〜3ヶ月)熟成させたものをいいます。熟成期間が長いほど酢が黄色っぽい色から褐色し、濃い色に変わる事から黒酢の名も由来しています。
大きくわけると、沖縄のもろみ酢や中国の香酢も黒酢の仲間になります。黒酢というと一般的に知られているのは、鹿児島県姶良郡福山町で醸造されたものです。福山町では200年前からの伝統的な製造法で今も変わらず製造が行われています。
黒酢が伝わったのは福山町が支那・朝鮮半島・琉球の貿易の中心となる港町として大変賑わっていた文政3年のことでした。その時、中国から来た一人の商人が福山の竹之下松兵衛に米で酢ができることを教えたのが、黒酢の始まりだと言われています。
当時はこの酢の事をアマンと呼んでいました。これは中国の福建省にあるアモイという港でも米を使って酢が作られていたことから、アモイが訛っていつしかアマンと呼ばれるようになったと言われています。黒酢作りに欠かせない良質の米と自然の水に恵まれた福山町は黒酢作りには最適の環境だったのです。
もうひとつ黒酢作りに必要なのがかめ壷です。この薩摩焼のかめ壷をアマン壷と呼び、露天静置で仕込みから熟成まですべての工程をひとつのかめ壷で行っています。この方法は世界でも珍しく他ではイタリアのバルサミコ酢だけです。
最近注目されている黒酢ですが、黒酢には定義がなかったので、色が黒い酢は品質に関わらず、すべて黒酢と呼ばれていたため、2003年に農林水産省がJAS規格を定めました。
それによると、穀物酢のうち、原材料として米(精白していないもの)もしくは大麦を、酢1リットル当たり180g以上使用し、かつ発酵や熟成によって(黒)褐色になったもの。米黒酢にあっては「米黒酢」と、大麦黒酢にあっては「大麦黒酢」と記載する、と規定されました。黒酢の主成分はアミノ酸ですが他に、有機酸、酢酸、ビタミン、ミネラル類を含んでいます。
<効能・効果>
黒酢の黒い色素はアミノ酸と糖が反応して出来たものです。人間の身体はタンパク質でできていますが、そのタンパク質のもととなっているのがアミノ酸です。20種類のアミノ酸のうち8種の必須アミノ酸は体内で生産できないので、食べ物から摂らなければいけません。
黒酢には8種すべて含まれており、有機酸とともに血液をサラサラにする効果があるので、動脈硬化、脳卒中、血栓、高血圧など血流障害から起こる病気を防ぐことができます。また、血糖値、総コレステロールを減少させ、悪玉を善玉に変えます。
有機酸や酢酸は体内に入るとクエン酸に変わり、体の酸化を防ぐので老化を抑えます。もともと人間にも酸化を阻害するクエン酸の体内サイクル機能が備わっています。
このクエン酸の体内サイクル(炭水化物・タンパク質・脂肪が体内で分解されて、クエン酸など8種類の酸にかわりエネルギーとなる基礎代謝のこと)が乱れると代謝が悪くなり血液の酸化とともに乳酸が蓄積し、疲労の原因となります。
有機酸は乳酸を減少させるので、疲労回復に効果があり、クエン酸は新陳代謝を促進し、脂肪を効率よくエネルギーにかえる働きがあるので、肥満の予防にもなります。また、特有の酸味は唾液や胃酸の分泌を促進するので、食欲増進になります。
黒酢のよく知られている効果としては殺菌・防腐効果がありますが、薄めて肌や髪につけると保湿力が高まります。原液を飲む場合は、酢酸で喉や胃の粘膜を痛める恐れがあるので、必ず薄めて飲みましょう。黒酢は消化吸収を助ける働きがあるので、食後が好ましく、一日の摂取量としては、体重1kgに対して0.5ccが適量です。