高麗人参は学名をパナックス・ジンセング( Panax ginseng C.A.Meyer)と言います。これは、旧ソ連の科学者C.Meyerが、1843年に命名したものです。
「Panax 」はギリシャ語で万能薬と言う意味で、「ginseng」は朝鮮人参(の根)を意味するように朝鮮人参やオタネニンジンの名でも知られています。と言っても野菜の人参とは全く異なるものです。野菜の人参はセリ科ですが、高麗人参はウコギ科です。
高麗人参は約2,000年前の中国の文献「急就章」に強壮剤として記載されてから、中国の医学書「神農本草経」には薬効などの具体的な内容があり、2000年前から『万能薬・不老長寿の薬』として珍重されてきました。
主に中国、韓国、朝鮮半島に自生していますが、人工栽培も昔から行われてきました。しかし、栽培が大変難しく、一番大切なのは土壌選びです。良い土壌を見つけると、更に改良を加え収穫するまでに4〜6年かかります。
また、畑の栄養分をめいっぱい吸収して育つため、同じ畑で高麗人参を栽培するには15年から50年は出来ないと言われています。年数が増えるにつれて、有効成分の種類が増えますが、7年以上経つと、収穫までにひび割れなどが起こってしまうため、6年根が最もよいとされています。
さらに栄養分が根に集中するように収穫する年は花を切り落としてしまうのです。収穫された高麗人参は3つに分けられます。収穫したものを、乾燥させず、生のまま製品として利用するものを水参といいます。この水参を長期間そのまま保つ為に水蒸気で蒸して乾燥させたものを紅参といい、紅褐色をしています。
また、水参を皮をむいて、天日干しまたは、熱風乾燥させたものを白参といいます。日本に伝わったのは奈良時代といわれていますが、天皇や将軍などへの献上品とされるほど高価なものでした。
日本での栽培は江戸時代、幕府が手に入れた種子を栽培し成功したのが始まりで、その種苗を各藩に分け与えて栽培を奨励したことから、全国に普及しました。しかし、幕府の管轄の下で栽培されていたので、値段も高く庶民が手に入れることは難しかったようです。
<効能・効果>
中国の医学書「神農本草経」に「五臓(心、肺、腎、肝、脾)を補う。精神を安んず。魂魄を定める。驚悸を止める。邪気を除く。目を明らかに心を開く。智を益す。身を軽くし、年を延ぶ」と高麗人参の薬効について記されています。このような効果を導く主成分がサポニン肺糖体です。
一種の界面活性剤で、水に溶かしても消えにくい石鹸のような泡を作るのが特徴です。サポニンの中でも高麗人参に含まれるサポニンを人参サポニンといい、人参サポニンは根、葉、花蕾、果実などに較的多く含まれているのですが、サポニンの含有量は年数や栽培条件によっても異なり、最も多く含まれている部分は根の周皮です。
サポニンは体内でインスリンの様な働きをします。ご飯を食べると血中に入った糖が、血糖となるとインスリンが同時に分泌され、血糖は グリコーゲンとして肝臓などに運ばれエネルギー源となります。しかし、インスリンの分泌が低下すると、血中に糖が増え血糖値が上がってしまいます。
サポニンはすい臓に働きかけ、インスリンの分泌を正常化し、また血小板の凝集を抑制し血液をサラサラにするので、糖尿病だけでなく、脳卒中、心筋梗塞の予防・改善になります。血液の循環を良くすることで、血行不良からくる肩こりや冷え性などにも効果的です。
他にも人参サポニン(ジンセノサイド)には、肝臓疾患・老化防止・中枢神経系に関する有効作用・マクロファージ活性化作用(免疫力増強)消炎効果・ガン細胞の増殖成長抑制・抗腫瘍・内分泌系の活性化など多くの薬効が報告されています。