乳腺は15〜20個の腺葉に分かれ、腺葉はそれぞれ小葉に枝分かれしており、小葉は乳管によってつながれています。乳がんは、この乳管や小葉の上皮に発生する悪性腫瘍です。中でも乳管に発生する「乳管がん」が9割を占めています。
近親者に乳がん患者がいる人は、いない人に比べて可能性は高くなりますが、遺伝的素因に加えて、動物性脂肪食の過剰摂取や肥満などが関係していると言われています。また初潮が早い、閉経が遅い、結婚・出産経験がない、高齢出産などで女性ホルモン〈エストロゲン〉の影響をうける期間が長くなっていることも考えられます。
主な症状は乳房のしこりやえくぼ、腋(わき)の下などのリンパ節の腫れなどがあり、乳がんの種類によって症状も異なります。
(1)非浸潤がん…早期がん。乳管内や小葉内にとどまっているがんで、転移はおこしません。
(2)パジェット病…早期がん。主な症状は乳頭のびらん。しこりに触れることはほとんどありません。
(3)浸潤がん…乳房を触るとしこりに触れる。小さいうちからがん細胞がリンパ節や様々な臓器に転移をおこし、遠隔転移の症状もあらわれます。
<検査法>
検査は視診、触診、画像検査〈マンモグラフィ・超音波検査・MRI〉を行います。マンモグラフィは乳房をはさんでX線検査をするもので、触診でわからないような小さいしこりや石灰化などを発見することができます。
また、確定には細胞診や生検を行います。細胞診は、病巣に針を刺して、がん細胞を摂取し、顕微鏡で調べるものです。それでも確定できない場合は、しこりを一部採取して顕微鏡で調べる病理組織学的検査〈生検〉を行います。
<予防法>
治療は手術、放射線療法、化学療法、ホルモン〈内分泌〉療法があります。基本は手術による切除ですが、手術には乳房を全部摘出する「乳房切除術」としこりを含む乳腺の一部を切除する「乳房温存術」があります。
がんの範囲が広い、腫瘍が大きい、乳房の再建を望む場合などは全摘手術を行いますが、がんが小さい〈3cm以下〉、多発していない、広範囲におよんでいない場合で、放射線治療が可能であれば温存手術を行うこともできます。
全摘手術では乳房の全摘とともに腋窩リンパ節の郭清(かくせい)〈切除〉を行います。温存する場合は扇状に切除する方法と円状に切除する方法があり、必要であれば腋窩(えきか)リンパ節の郭清を行います。
術後は残存したがん細胞に対して放射線治療を行います。また、抗がん剤による全身療法や、エストロゲン受容体をもっている場合はホルモン療法を必要に応じて併用します。