食道と胃の接合部を食道噴門部と言います。噴門部は普段閉じていますが、食物が運ばれてくると噴門部の筋肉〈下部食道括約筋〉を弛緩(しかん)させて胃に送り込む働きがあります。
食道アカラシアでは、この筋肉の神経に異常が起こり、筋肉の弛緩運動が正常に出来なくなることで、噴門部が閉鎖し、食物が通過しにくくなる疾患です。症状は食物が通らなくなるので、胸部食道が拡張し、嘔吐(おうと)や胸痛があります。
これが長期間続くと、液体も通らなくなり体重が減少してきます。20〜40代の特に女性に多い疾患で悪性ではないので危険はありませんが、特に夜間、就寝中に食道に詰まった物が逆流することが多いので、注意が必要です。また、これが原因で気管支炎や肺炎を起こすこともあります。
<検査>
X線造影検査、内視鏡検査、内圧検査を行い、食道の状態を観察します。X線造影はバリウムを用いて、食道の拡張や食道から胃へのバリウムの流れを見ます。
内視鏡検査では食道の拡張や、粘膜を調べ合併症として高いがんの有無を判断します。内圧検査は食道内の内圧の上昇を調べ、食道の動きや下部食道括約筋の弛緩状態を見る検査で、食道アカラシアの診断を確実にするために必要な検査です。
<治療法>
(1)薬物
(2)非観血的拡張術
(3)手術があります。
薬物療法は、主に高血圧や狭心症(きょうしんしょう)の治療で降圧剤として使われるカルシウム拮抗剤(きっこうざい)が用いられますが、補助的なものです。
非観血的拡張法は噴門部の狭窄(きょうさく)しているところにバルーンを入れて膨らませ、下部食道括約筋を緩め噴門部を拡げるものです。この療法を何度か繰り返すとほとんど改善されます。これで効果がない場合は手術です。
食道下端の筋肉を縦に切開して、下部食道括約筋周りの筋肉を切除し、噴門部にかかっている力を弱めます。しかし、この方法は逆流性食道炎を起こしやすくなるので、胃の上部を切除した部分に巻きつけて逆流するのを防止します。最近は、腹膜鏡を用いた内視鏡手術が行われており、傷口も小さく済むようです。