食道内腔の粘膜に発生するがんです。粘膜は扁平上皮(へんぺいじょうひ)で覆われている為、食道がんの90%が扁平上皮がんです。50歳以上のお酒を好む方、喫煙者に多いと言われていますが、両方に該当しない人でも、熱い食べ物や辛い食べ物を好む人も注意が必要です。
他に、腺がんがありますが、これは胃酸が逆流して食道の粘膜が炎症を起こし、胃の粘膜であるバレット上皮という円柱上皮が発生する事から起こります。日本人には少ないのですが、欧米では食道がんの6〜7割を占めています。
早期のがんは無症状ですが、進行とともに熱いものがしみるようになり、次第に固形物を飲み込むときにつかえる様になります。この症状は、急いで食事をした時に起こりやすく、ゆっくり食事をしたときには感じにくくなるため見逃されがちです。
さらに内腔が狭くなると、やわらかいものや液体が詰まって嘔吐(おうと)したり、数ヶ月で急に体重が減少します。また、リンパ液や血液を通して粘膜から筋肉層に入り込み、食道の外に侵入して他の臓器へと転移していきます。
<検査>
【食道造影検査】
バリウムを使用して、がんや食道内腔の状態を調べたり、がんによって気管と食道がつながる食道気管瘻を発見します。
【内視鏡検査】
ヨード液〈ルゴール液〉を使用して、粘膜を染色します。正常であれば黒く染まりますが、不染色部分が見られる場合は、がんなどによって粘膜に異常があるということです。その不染色部分の粘膜を採取し、組織を調べて〈生検組織判断〉、がん細胞を発見します。食道造影検査では見つからない早期がんの発見ができます。
【CT、MRI検査】
CT検査〈コンピューター断層撮影〉、MRI検査〈磁気共鳴画像法〉では、他の臓器やリンパ節に転移していないかを調べます。
【超音波内視鏡検査】
内視鏡の先端に超音波検査装置を取り付け、がんがどれくらい浸潤(しんじゅん)しているのか、またがんの状態を判断します。治療法を決定する上で重要な検査です。
<治療法>
治療はがんの進行度(0期〜W期)や部位、身体の状態によって決められます。早期のがんでリンパ節への転移が無ければ、内視鏡を用いてがんが発生した部分の粘膜を切除しますが、進行がんでリンパの転移があれば、がんの発生部位と同時にリンパ節の切除も行います。
頸部(けいぶ)、胸部、腹部によって手術は異なりますが、切除後は取り除いた食道の代わりに胃、大腸、小腸を管状にして代用します。この手術には少ない確率ですが、肺炎や縫合不全の合併症を伴うこともあります。
手術後は、補助的なものとして外から放射線を照射してがん細胞を焼いて死滅させる放射線治療と主にシスプラチンと5-フルオロウラシンなどの抗がん剤治療を併用して行います。どちらも副作用がありますが、自然に回復します。
がんがすでに進行している場合や手術ができない場合にも行われます。他にも食道が狭くなったところには、ステントいう円筒状の金属を入れたり、がんの部分はそのままにして、別に食べ物を運ぶ管を作り、食道の機能を補うバイパス手術が行われています。