食道と胃の接合部には下部食道括約筋という筋肉があります。この筋肉は、食物が運ばれてくると筋肉を緩めて胃に送り、食物が胃の中で消化されると、今度は筋肉を締めて胃の中のものが逆流しないように防御しています。
しかし、この防御機能に異常が起こると、胃の中のものが胃酸とともに食道に逆流します。〈胃食道逆流症〉胃は胃酸から守るために粘液を分泌していますが、食道にはそのような働きがないので、強い胃酸によって食道の粘膜が傷つき、炎症を起こします。
これが逆流性食道炎です。主な症状として胸焼け、つかえ、胃酸が上がってくる、胸や背中の痛みがありますが、慢性化すると出血したり、がんにつながります。
<原因>
(1)老化や手術などで下部食道括約筋が緩んで、逆流防止の働きが低下する。
(2)食道から胃に運ぶ働き〈ぜん動運動〉が鈍くなり、逆流した胃酸がなかなか胃に戻らない。
(3)食生活の欧米化やピロリ菌感染〈除菌後、一時的に増える〉により胃酸の量が増える。
(4)ベルトなどで外からお腹を圧迫することで、胃酸が逆流しやすくなる。
(5)過食。肥満になると、腹圧が上昇し胃酸が逆流しやすくなる。
<治療法>
一般的には、プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなどの薬を用いて胃酸を抑え、食道粘膜の損傷を防ぎます。また、ぜん動運動を促進する薬を用いたり、手術で逆流を防止する腹腔鏡手術や内視鏡手術が行われます。
原因に基づいて治療も行われますので、減量したり、胃酸の分泌を増加させるような食べ物や喫煙、飲酒を控えなければなりませんし、前かがみの姿勢や食後にすぐ横になるのも逆流する原因となっているので改善が必要です。これらは日頃からの予防としても注意しなければなりません。