膵臓にあるランゲルハンス島の細胞に発生する腫瘍によって低血糖がおこる症候性のものです。食事から摂取した糖〈ブドウ糖〉は、血液を介(かい)して全身に運ばれますが、この時、ランゲルハンス島からインスリンが分泌され、細胞に取り込んで、エネルギー源として使ったり、肝臓に蓄えたりします。
しかし、ランゲルハンス島に腫瘍ができると、インスリンの分泌が過剰になり、取り込むブドウ糖の量が増加し、逆に血液中のブドウ糖が減少するため、低血糖をおこします。低血糖状態になると、発作を起こして痙攣(けいれん)をおこしたり、意識がなくなって昏睡状態(こんすいじょうたい)に陥ることもあります。
<種類>
インスリノーマはまれな病気ですが、他にも膵内分泌腫瘍からおこるものとして、ガストリノーマ・WDHA症候群・グルカノーマ症候群があります。
●ガストリノーマ
胃酸分泌に関わるガストリンとうホルモンが大量につくられるため、胃酸分泌が過剰になり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができ、胸焼け、腹痛、吐血、下血などがおこります。
●WDHA症候群
VIP〈血管作動性腸管ポリペプチド〉という胃酸分泌を抑えるホルモンを産生するため、小腸が刺激され、下痢がおこります。
●グルカノーマ症候群
血液中の糖濃度を上昇させるグルカゴンが過剰につくられるため、糖尿病と同じような症状があわられ、体重減少がみられます。また、発疹や水疱ができるのも特徴です。
<治療法>
低血糖状態でおこった症状は、食事によって糖を摂取することで回復します。インスリノーマは良性の割合が高いといわれています。他の腫瘍はごくまれですが、インスリーマに比べ、悪性度は高いといわれています。
検査は血液検査、腹部超音波検査、CT検査、血管造影検査を行います。早期発見し、腫瘍を切除することで完治しますが、症状が治まらない場合は、各ホルモンの分泌を抑制する薬を用います。手術が出来ない場合は、抗がん剤を用いた化学療法が中心になります。