うつ病とは、過度なストレスや環境の変化などがきっかけで起こる心の病です。私たちは日ごろの生活の中でストレスを感じたり落ち込むことがあっても、そのストレスを発散したり、時間がたてば落ち込んだ気分も徐々に元に戻ったりと、適応する力を持っています。
しかし、うつ病の人は日常的に何をしても抑うつ状態で、ストレス発散をしようなどという気力も湧かず、身体的にも様々な症状が出てきます。
ストレス環境が多い現代では、うつ病にかかる人は多く、その病名は聞きなれている人が多いかと思いますが、うつ病そのものの原因は未だ解明されてはいません。体の病気と違って、病因が目に見えないところにあるからこそ、周りの理解と協力が何より大切になる病気です。
<原因>
うつ病の原因は、はっきりと解明されてはいませんが、うつ病やパニック障害などの心の病気にかかっている人は、感情(神経)の興奮を調節するセロトニンという物質が少なくなっていることが分かっています。
通常私たちは、落ち込んだり興奮したりしても、時間とともに気持が落ち着きますが、セロトニンが少ないと神経の興奮を抑制できずに、不安感や恐怖心から抜けられない心理状態になったりします。
またうつ病になるきっかけとしては人間関係だけでなく、環境の変化、物理的ストレス、身体的なものなど、様々なものが重なって、それに対処できず心と体のバランスが崩れたときに引き起こしやすくなります。
■うつ病のきっかけになるもの
職場での人間関係不和、人事異動、リストラ、出産、昇進、引っ越し、家庭不和、ペットロス、家族や友人との死別、化学薬品の副作用、更年期、慢性疲労、定年、経済的負担(出産や昇進などの喜ばしいことでも、それによって生じる責任感による重圧や孤独感、ストレスなどがうつ病のきっかけになることがあります。)
<症状>
うつ病による症状は抑うつ状態だけでなく、身体的にも様々な症状が出ます。ただ、身体的症状は自律神経失調症との症状と似ていますし、日々生活する中で疲れを感じると、誰しもが経験したことのある症状も多くありますので、これらに当てはまるからといって必ずしもうつ病というわけではありませんので、うつ病かどうかの診断は専門医からきちんと受けるようにお勧めします。
■精神的症状
憂鬱な気分が続く、何もする気がおきない、朝が特にきつい、物事に興味がわかない、集中できない、仕事でミスが増えた、不安や焦りが消えない、自分に価値がないように感じる、自殺願望がわく、涙もろくなる
■身体的症状
不眠、食欲がわかない、性欲減退、体重が減る、便通が悪い、慢性的に疲れている、胃腸が悪い、月経不順、倦怠感、耳鳴り、頭痛、肩や背中の痛み、動機、めまい、アルコール依存など
<うつ病になりやすい人>
うつ病は環境や遺伝的要因や性格など、様々なものが重なっておこるものですので、一概に「こういう人がなりやすい」と言えるものではありませんが、様々なうつ病患者の統計をとる中で「こういう性格の人は気を付けたほうがいい」という共通するタイプはあるようです。
ただ、当然ながら人によってストレス耐性や環境は違いますので、あくまでも一つの参考としてのものになります。
<生真面目、几帳面、完璧主義、人に弱音を吐けない、人目をすごく気にする、自分の気持ちをはっきり言えない、自己犠牲が強い、凝り性、過労気味、正義感が強い>
<うつ病の人との接し方>
健康な人から見ると、うつ病の症状は一見「やる気がない」とか「なまけてる」ように見えるかもしれませんが、うつ病とは心身が頑張りすぎたときになる病気ですから、それをなまけてるように見えるからといって「頑張れ!」と励ましたり、「しっかりしろ!」とプレッシャーをかけるのは逆効果です。
他人から見ると大したことないように見えても、うつ病患者は心身ともに非常に疲れ切った状態なのです。そんな状態のときに説教や励ましをしても、むしろストレスが倍増し、病状が悪化すると取り返しのつかないことになりかねないので、うつ病患者と接するには、周りの人もうつ病がどんな病気なのかを理解し、見守る環境が必要です。
気分の落ち込みや体に出る症状に対して、病院で薬をもらうことはできますが、うつ病は他の病気のように薬だけで治る病気ではありません。根本的にうつ病を改善するには、抱えてるストレスを吐き出させ、心身をゆっくり休める環境をつくり、家族が一丸となってうつ病と向き合うことが大切です。
<うつ病にならないために>
うつ病は前述のとおり、心が頑張りすぎてる時や、無理をしすぎて心身のバランスが崩れたときになりやすい病気です。ですので、うつ病が重症化しないためにも普段から心身の健康を保つライフスタイルを心がけることがうつ病への予防にもなります。
■自分にストレスを与えるような思考パターンを変える
うつ病は生真面目な性格の人や、完璧主義の人がなりやすいと言われています。どんなことでも自一人で抱え込まずに、自分が「きついな」と思ったら、時には人に頼ったり、頑張りすぎることをやめてみるのも大切です。
毎日の家事も、少しくらい手を抜いても大丈夫です。物事にまじめに取り組むことは大切ですが、自分の心が悲鳴をあげていては本末転倒です。どうにもならない時には諦めて割り切るという考えや、過ぎたことには執着してくよくよしない!などの切り替えを意識してやってみましょう。
■ストレス発散や、気持ちのメリハリをつけることができるよう心がける
例えば職場で嫌なことがあったとき、重圧のある仕事をしている時に、オフの時間にはそのストレスを発散できるよう、日ごろから趣味を2つ3つ持っておくのは気分転換に大切なことです。嫌な気持ちを引きずらない人、ストレスをためない人は、この気持ちの切り替えが上手です。
就業時間外は仕事のことを考えない、休日は家事を休んで自分のために時間を使う、など、大変かもしれませんがしっかりとリラックスできる時間をとって、自分を心と体をケアしてあげましょう。また、体を動かすことはエネルギーを使い、その分ストレスも発散されますので、運動がおすすめです。運動が苦手な人はウォーキングだけでもずいぶん気分転換できます。
■睡眠時間をしっかりとる、規則正しい生活をする
不健康な生活習慣は心身へ悪影響を及ぼします。また家に閉じこもってばかりいるのも、精神衛生上良いとは言えません。夜から朝はしっかり眠って、朝起きたら朝日を浴びて活動する。こういう当たり前の生活習慣が内面からの健康を作ります。
また太陽の光は体内でビタミンDの生成を助けますし、逆に太陽光の不足は軽度のうつ病を発症させるとも言われています。夜勤の仕事の人は仕方ありませんが、それでも生活のリズムは一定になるよう心がけ、せめて休日は太陽の光を浴びれるように過ごしてみましょう。
■バランスのいい食事をする
うつ病患者は脳内の神経伝達物質であるセロトニンが少ないと言われていわれているので、そのセロトニンを体内で生成するために必要なトリプトファンを多く含む食材を摂ることで、セロトニンを補うことができます。(過剰摂取にならないよう、適量を継続的に摂ることをおすすめします。)<トリプトファンを多く含有する食材>牛乳、チーズ、大豆、バナナ、アーモンド、赤身の魚、レバーなど
<まとめ>
今は昔に比べて経済状況も良くなり娯楽も増えて、豊かな社会になっているにも関わらず、うつ病患者は年々増加していると言われています。それは便利になった現代だからこそ、昔に比べると人とコミュニケーションをとる機会が減ったり、物や情報が溢れすぎてることで心に迷いや不安が生じたり、他人との意思の疎通がスムーズにできなくなっているという、現代ならではの問題なのかもしれません。
うつ病は決して特別な病気ではなく、誰しもがなる可能性のある身近な病気です。真面目で頑張りやな人がなりやすい病気なので、病状が深刻化するまで本人は自覚がなく、「まさか自分がうつ病なんて!」と思っていますので、実際にうつ病だと診断された時には、それを治すのにもある程度の期間がかかってしまいます。
そうならないためにも、日ごろからストレスを発散しながら気持を上手にコントロール出来るように気をつけたり、一人で抱え込まずに苦しい時は誰かに頼ったり、愚痴を聞いてもらったりというセルフケアを心がけていきましょう。