パニック障害とは、検査をしても体のどこにも異常がないにも関わらず、発作的に激しい動機・不安感・めまい・呼吸困難などが起こる病気です。この症状はパニック発作と呼ばれ、一般的に1回の発作は10〜30分ほどで落ち着きます。
パニック障害になる原因はまだ解明されていませんが、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンのバランスの崩れによるものと考えられています。また二酸化炭素や乳酸はパニック発作を誘発させやすいことや、遺伝的要因・環境ストレスなども原因として考えられます。
<症状>
パニック障害の症状は、1.パニック発作、2.予期不安、3.広場恐怖の3つが主に挙げられます。
(1)パニック発作
パニック発作が起きやすい場面として、緊張しているときや疲れているとき、精神的にストレスを抱えているとき、カフェインを摂取したとき、以前にパニック発作を起こした時と同じ場所や状況のときなどが挙げられます。
症状…体が震える、胸がしめつけられる、脈が速くなる、呼吸困難、吐き気、激しい動機、発汗、めまい、皮膚感覚の異常、このまま死んでしまうのではという強い不安が押し寄せ、個人差はありますが10〜30分程で落ち着きます。これらの症状を本人は感じつつも、全身を検査してもどこにも異常がないのがパニック障害の症状の一つです。
(2)予期不安
パニック発作は強い不安感や死の恐怖を感じるため、パニック発作を繰り返していくと「またあの発作が起きるのではないか」という不安が募ってくるようになります。これを「予期不安」といいますが、予期不安が強まるとさらに下記の「広場恐怖」へとつながります。
(3)広場恐怖
もし外出先でパニック発作を起こしてしまったら…と思うと、すぐに助けを求められないことへの不安や、人に迷惑をかけてしまうこと、発作を人に見られる恥ずかしさで外出をためらうようになります。なかでも、過去に発作を起こした場所や、それに似ている状況を避けたり、すぐに助けを求められない人ごみや乗り物内では特に不安が強くなります。
その不安からくる緊張が、余計に発作をおこしやすくしますので、どんどん悪循環になり、日常生活に支障をきたすことが増えてきます。患者は耐え難い不安に潰されそうになり、ひどくなると鬱病を併発することもあります。
<治療>
パニック発作は不安や緊張が募ると出やすいので、薬を使うことで心がリラックスできる状態になるようにする【薬物療法】と、予期不安や広場恐怖の症状をなくしていくための【認知行動療法】を用いて、症状に対処していきます。
薬物療法にはSSRIという脳内のセロトニンを増やす薬を中心に、精神が落ち着くように抗うつ薬や抗不安薬も使用します。認知行動療法とは、広場恐怖によって避けている状況や場所に、ゆっくりと少しずつ何度も近づくことにより、その状況や場所に遭遇してもパニック発作は起きないという安心感を自分に植えつけていくことです。
その場所に慣れていくことで、緊張感や不安感が少しずつ弱まり、パニック発作の恐怖を克服していきます。パニック障害の完治までの期間には個人差がありますが、この2つの治療を行うことで徐々に発作が起きる回数を減らしていくことができます。
<家族がパニック障害になったときの注意>
まずは本人にストレスをかけてしまうような言動をしないことです。パニック発作は強い不安と死の恐怖を感じ、本人にとってはこれ以上ないくらいの苦痛なのです。
それを周りの人間から「気のもちようではないか」とか「思い切って外に出かけてはどうか」などの理解を示さない言葉はストレス以外のなんでもありません。パニック障害は時間をかけてゆっくりと治していく脳の病気なのです。本人がゆっくりと安心して病気に向き合っていけるようにするには家族の理解と協力が不可欠です。
その他にはカフェインを摂らない、不規則な生活をしない、無理に外出させない、外出の際は一緒につきそう、発作が出たら背中をさするなどして安心させる、などが大切です。こうした家族の深い理解と思いやりが、患者の自信回復につながっていきます。