膀胱炎とは、膀胱に炎症が起き、膀胱の機能に支障をきたす事で様々な症状が現れる病気です。膀胱炎の原因のほとんどは、細菌感染によるものです。細菌が尿道から膀胱に入り込み、細菌が繁殖して炎症が起き、症状が現れます。
その細菌とは、ブドウ球菌、大腸菌、プロテウスなどいくつもありますが、「大腸菌」が、約8割を占めています。膀胱は、腎臓で作られた尿を一時的に溜めておく臓器です。その尿の中も、元々少量の細菌が存在しています。ですが、通常、膀胱の抵抗力によって炎症は起きません。
また排尿によって、細菌がいる尿は膀胱から出ていきますし、それと同時に尿道に潜んでいる細菌も洗い流されます。ですが、体調が悪かったり、ストレスや疲れで体力が落ちていると、抵抗力が弱まってしまいます。すると、膀胱内にいる細菌が繁殖し、炎症を起こしてしまい、結果、膀胱炎になってしまうのです。
また、トイレに行くのを我慢してしまうと、その分、尿の中の細菌も長い間いる事になりますし、尿道の細菌も洗い流せません。ですので、我慢をくり返すと、膀胱炎を引き起こしてしまうリスクが高くなってしまいます。なお、膀胱炎が悪化すると、より重症な「腎盂腎炎(腎盂炎)」という病気になってしまいます。
<膀胱炎が女性に多い理由>
膀胱炎は、男性より女性が圧倒的に多いのが特徴です。その理由は、以下の様な事が挙げられます。
(1)女性の体の構造尿道の長さですが、男性は15p前後、女性は4p前後です。男性と比べると1/3の長さしかありません。女性の方が短い分、細菌が膀胱に侵入しやすいという訳です。また、男性に比べ、尿道口が膣や肛門に近い事です。排便後の拭き方や生理、おりものでどうしても細菌が入りやすいのです。
(2)妊娠中子宮は、膀胱の後ろに位置します。妊娠すると子宮が大きくなり、後ろにある膀胱を圧迫していきます。初めは膀胱が空になりにくくなる事で、細菌が繁殖して、膀胱炎になってしまうのですが、妊娠も後期になると、ますます子宮は大きくなり、常に膀胱を圧迫する事で、膀胱の容量自体が小さくなって、酷い頻尿となってしまいます。
(3)更年期更年期になると女性ホルモンが低下します。女性ホルモンが低下すると、膀胱の抵抗力が弱まって粘膜が薄くなります。それが原因で、膀胱の粘膜が出血しやすくなると云われています。
(4)性行為性行為の時に、尿道に傷が付くと細菌が侵入しやすくなり、膀胱炎にかかりやすくなります。
<症状>
膀胱炎の種類により症状が多少異なる所がありますが、主な症状としては、頻尿、残尿感、排尿時の痛みが挙げられます。
<レベル1>
トイレの回数が普段より増えた、排尿したのになんだかすっきりしない
<レベル2>
排尿が終わる頃に、「つーん」としたしみる様な痛みや、ぼんやりとした痛み、もしくは、違和感を感じる
<レベル3>
残尿感が強くなりトイレの回数がますます増える、はっきりとした痛みを感じる
<レベル4>
ますます残尿感が酷くなる、焼きつくような痛みがある、尿が白く濁る、または血が混じっている
<膀胱炎の種類>
●急性膀胱炎
一般的に膀胱炎と云われる大半はこの「急性膀胱炎」の事を指します。この膀胱炎は基礎疾患がない単純性がほとんどです。原因は、大腸菌などの細菌が、尿道口から膀胱の中に入り、その中で繁殖して炎症を起こします。なお、この膀胱炎にかかるのは女性に多く、男性がかかるのは稀です。
●慢性膀胱炎
急性膀胱炎は症状が強く現れるのに対し、この「慢性膀胱炎」は、症状が軽い、または自覚がない事もあり、治療に時間がかかります。この慢性膀胱炎ですが、急性から慢性に移行するものと、初めから慢性の症状が現れる場合があるようです。
(1)慢性複雑性膀胱炎
持っている基礎疾患が原因で、細菌が膀胱の内に入り、繁殖し炎症を起こす膀胱炎を「慢性膀胱炎」と云います。この膀胱炎になる基礎疾患としては、、前立腺肥大症、膀胱結石、尿路結石、膀胱腫瘍、糖尿病などがあります。症状としては、急性膀胱炎とほとんど同じで、症状の出方は軽く、また自覚症状がない場合もあります。ちなみに、基礎疾患がない慢性膀胱炎は「慢性単純性膀胱炎」と云い、これは急性膀胱炎の症状が慢性的に続く膀胱炎の事です。
(2)非細菌性慢性膀胱炎
今まで述べてきたのは、いずれも細菌が原因で(細菌性)、粘膜が炎症を起こしていました。ですが、細菌が原因ではなく(非細菌性)、基礎疾患もない場合に、この「非細菌性慢性膀胱炎」と診断されます。上記で述べた、女性ホルモン低下による膀胱炎は、この非細菌性慢性膀胱炎の1つになります。
●間質性膀胱炎
膀胱炎の中では、非常に症状が重く激しく現れ、非常につらい膀胱炎です。この膀胱炎にかかるのは女性が多いです。この「間質性膀胱炎」は非細菌性で、また炎症も粘膜だけでなく、その上の筋層までおよびます。
筋層にまで炎症を起こしているので、膀胱は膨らみづらく、正常な時の半分以下のしか尿を溜める事が出来ません。この様な事から、酷い頻尿に悩まされる事となります。症状は急性膀胱炎と似ている為、その様に診断されることもありますが、この膀胱炎は尿検査をしても原因となる細菌が見つからないですし、細菌が原因ではないので、抗生物質は効きません。
そのせいで、色んな科の病院に渡り歩いたり、精神的なものによる膀胱炎として診察される事もあると聞きます。この病気はあまり知られていないので、専門医でないと判断が難しいです。
この膀胱炎は、「膀胱境検査」を行えば分かりますので、膀胱炎の症状があるけど、尿検査では異常がないと診断された場合、間質性膀胱炎ではないかと疑って、診察出来る病院を探しましょう。
なお、この膀胱炎の原因はまだ解明されておらず、治療方法は確立されていません。その為、この膀胱炎に対する治療は、対症療法(症状の緩和や消失)となります。
●出血性膀胱炎
出血を伴う膀胱炎を「(急性)出血性膀胱炎」と云います。排尿の時に痛みがあり、尿は白く濁る事はなく、真っ赤な尿が出ます。この膀胱炎の原因で一番多いものは、ウィルス感染によるものです。
その他には食べ物や薬のアレルギー、抗がん剤などの投与があります。この膀胱炎は子供が多く、その場合「アデノウイルス」というウィルス感染によるものがほとんどです。因みに、膀胱炎は女性の方が多いですが、1歳までだと男の子の方がかかりやすいと云われています。
<治療>
●細菌性のものであれば、基本的には抗生物質の服用にて治療をしていきます。
*急性膀胱炎の場合、お薬は4〜5日分を処方され、1週間程で治ります。お薬を服用すると1〜2日程度で、症状が落ち着きます。ここで注意したいのは、症状が無くなったからといって、自己判断で勝手に服用を止めない事です。勝手に止めた事で、細菌を駆除しきれずに再発し、慢性化する事となります。必ず、医師の指示に従いましょう。
*慢性膀胱炎は、急性膀胱炎と違い、治療に時間がかかります。また、慢性複雑性膀胱炎であれば、基礎疾患の治療も同時に行っていきます。
●非細菌性慢性膀胱炎で、原因が女性ホルモンの低下によるものであれば、ホルモン補充療法を行います。
●間質性膀胱炎の治療で、中心となっているのは「膀胱水圧拡張術」と云われるものです。これは、麻酔をかけ、膀胱に生理用食塩水を注入して、委縮している膀胱を拡張させるものです。他には、抗アレルギー剤などのお薬を服用したり、膀胱にお薬を注入するといったものもあります。
●出血性膀胱炎の治療ですが、原因がアデノウィルスであれば、現在、そのウィルスに対して効果がある薬はない為、自然治癒となります。水分をたくさん取り、安静にすれば、3〜4日位で良くなります。※病院で診察を受けても、軽度であれば、水分を多く摂ってもらい、自然治癒にて治していく場合があります。
尿をたくさん作り、排尿によって細菌を膀胱から流しだすという訳です。症状に痛みが伴っていると、水分を摂る事や排尿を嫌がる人がいますが、薬を用いらなくて良いのですから、沢山水分を取って、どんどん細菌を膀胱から排出していきましよう。
<予防>
「菌を入れない・増やさない、抵抗力を落とさない」が予防のポイントとなります。
◆膀胱に細菌を入れない
・女性であれば、生理用のナプキン、おりものシートをこまめに取り換える。
・排便後のふき取りは、前から後ろに拭く。
・セックス前は、シャワーを浴びて清潔にし(自身だけでなく相手もです)、セックス後は、排尿する事。
◆膀胱に細菌を増やさない水分を多く摂り、排尿して細菌を外に出す。但し、トイレに行くのを我慢してしまうと、細菌が繁殖してしまうので、なるだけ我慢せずに行く事。尿意がなくても、3〜4時間毎にトイレに行くようにする。
◆身体の抵抗力を落とさない疲れを溜め込まない、睡眠を十分にとる事。もし、冷え性であれば、下半身を冷やさない様にしましょう。冷え性だと膀胱炎になるリスクが高いと云われています。