心臓のポンプの働きをしている心筋に障害がおこる病気で、他の病気が確認されず、原因が不明な場合の心臓疾患です。心筋症は、発症する部位や状態によって、大きく3つに分けられます。
●肥大型心筋症
心臓は他の病気によっても肥大したり厚くなることはありますが、そのような原因となる病気がなく、原因不明で心筋肥大がみられる場合、「肥大型心筋症」と診断されます。
さらに、肥大型心筋症には、左心室から大動脈の出口付近に狭窄があり、血流障害があるものを「閉塞型」といい、左右の心室を隔てている心室中隔部や側壁部などが肥大するものの、血流障害がないものを「非閉塞型」といいます。
「閉塞型」の場合、狭窄(きょうさく)によって、左心室に血液が流れ込みにくくなり、全身へ送られる血液が減少するため、脳に十分な血液が送られないと、意識障害をおこしたりします。初期は自覚症状がなく、動悸や呼吸困難などの症状があらわれることもあります。
●拡張型心筋症
拡張型心筋症は心筋の収縮力が低下し、心筋が拡張したものです。収縮・拡張が正常に働いて、心臓のポンプとしての役割をしているので、収縮力が低下することによって、拡張する力が強くなり、心臓の内腔は大きくなり、心筋は薄くなります。
また、ポンプとしての機能も低下し、息切れ、呼吸困難といった症状がおこります。心臓内の血液を送り出すことができずに、心臓や肺、静脈に血液が溜まって、血栓をつくり、血管に詰まると脳梗塞や手足のまひがあらわれます。ウイルス感染によって心筋に炎症を起こし、続発することもあります。
●拘束型心筋症
はっきりとした原因は不明です。心筋が硬くなって収縮力はそのままですが、拡張力が低下し、血液が心臓に流れ込みにくくなるため、肺などに血液がうっ滞して、全身へ送られにくくなります。症状は、動悸、呼吸困難、胸痛、全身倦怠感(けんたいかん)などです。
<治療法>
胸部X線検査で心臓の異常がみつかると、心電図検査、心エコー検査を行い、不整脈や心臓内腔や運動の異常を確認します。また、他の疾患と判断するために、心臓カテーテル検査を行うこともあります。治療はそれぞれ異なりますが、薬物療法が中心となります。
ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬(きっこうざい)は心臓の収縮を弱め、利尿薬は水分の排泄を促し、血液量を減らして血圧を下げます。ACE(アンジオテンシン交換酵素)阻害薬などの血管拡張薬は血管だけでなく心臓にも作用します。いずれも心臓にかかる負担を軽減させ、心筋症自体の治療と、心不全に対する治療を行います。
また、不整脈や塞栓がある場合は、抗不整脈剤や抗凝血剤を用います。しかし、多量に使用することで症状を悪化させるものもあるので、必ず医師の指示に従ってください。薬物療法で効果が得られない場合は、手術で切除したり、人工ペースメーカーを用いたり、心臓移植があります。
<予防法>
日常の中で気をつけることがいくつかあります。まず、激しい運動は心臓にかかる負担が大きいので避けることです。しかし、適度な運動は心臓を強くしたり中性脂肪を減らし、心臓の負担を軽くします。食事面では特に塩分の摂取を控えなければいけません。