心臓には三尖弁(さんせんべん)、肺静脈弁、僧帽弁(そうぼうべん)、大動脈弁の4つの弁があり、この弁が開いたり、閉じたりすることで、血液輸送と逆流防止の役目をしています。心臓弁膜症は弁の開閉がうまくいかなくなり、血液が押し出されずに溜まったり、押し出した血液が逆流してしまう病気です。
弁の機能が低下するということは心臓自体の機能も低下し、最終的には心不全をおこします。心臓弁膜症には弁の開閉部が狭くなる「狭窄」(きょうさく)と弁が完全に閉まらない「閉鎖不全」2つのタイプがあり、さらに発症する弁によって分かれます。
<種類>
●僧帽弁狭窄症
僧帽弁に狭窄がおこり、左心房から左心室に血液が送れなくなります。左心房に滞った血液は、血の塊をつくり、血栓をつくりやすくなります。症状は咳、動悸、呼吸困難です。
●僧帽弁閉鎖不全症
通常は左心室から大動脈に送られる血液が、僧帽弁が完全に閉じなくなるため、左心室に逆流する病気です。初期は無症状のことが多く、心臓が肥大するにつれて、息切れ、咳、食欲不振などが起こり、進行すると呼吸困難になります。
●大動脈弁狭窄症
大動脈弁が狭くなることによって、左心室から大動脈へ血液が送られにくくなります。左心室は血液を送り出そうとするため、左心室にかかる負担が大きくなります。徐々に機能が低下し、突然、胸痛や呼吸困難を起こして意識を失い、死に至ることもあります。
●大動脈弁閉鎖不全症
大動脈の閉じが不完全なため、大動脈に送られる血液が逆流します。逆流すると、その分を送り出そうとするため、左心室に負担がかかり、心不全をおこします。症状は息切れ、動悸、呼吸困難、胸痛です。
<予防法>
聴診で異常音が聞こえたら、胸部X線検査や心電図で心臓の異常を調べます。診断の確定には超音波検査を行い、心臓の肥大や狭窄(きょうさく)、逆流の程度を確認します。薬物療法は、強心剤や利尿剤、血管拡張剤を用いて、心臓の負担を減らすことが大切です。
日常生活の中でも塩分を控えたり、激しい運動は避けて適度な運動を行うなど、なるべく心臓に負担をかけないようにします。薬物療法は、症状を抑えるためのもので、弁自体が改善されるものではありません。
弁を修復するには、外科療法を行います。手術には傷ついた弁を治し、自分の弁を温存する弁形成術がありますが、この方法が適応しない場合は、悪くなった弁を人工弁に置き換える弁置換術(べんちかんじゅつ)を行います。