人間にとって血液は必要な酸素や栄養分を運ぶ大切な役割を担っています。特に赤血球は、肺から酸素を取り込んで、全身へと運び各組織から出された老廃物を排出する働きがあります。この働きを行っているのが赤血球中のヘモグロビンです。貧血とは、何らかの原因で赤血球数や赤血球中のヘモグロビン数が減少することによって起こります。血液が酸素を運べなくなり、酸素が行き渡らなくなることから様々な症状があらわれます。症状は原因によって異なりますが、めまい、顔色が悪い、動悸、息切れ、頭痛、疲れやすくなるなどです。
<原因>
・鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンの産生には鉄分が必要です。しかし、月経や胃潰瘍などの出血や、成長期で失われた分の鉄分を補給できていないと、出来の悪いヘモグロビンがつくられます。
・溶血性貧血
先天性、免疫機能の異常、血流の異常などから破壊されやすい赤血球がつくられ、赤血球の寿命(平均120日)が極端に短くなります。
・再生不良性貧血
血液は骨髄の中の幹細胞からつくられますが、この幹細胞の数が少なくなったり、機能が低下して血液を産生できなくなり、赤血球・白血球・血小板数が減少します。
・巨赤芽球性貧血
造血に必要なビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球のDNA合成がうまくいかずに、未熟なまま大きくなり、正常な運搬機能ができない大きな赤血球ができて、貧血をおこします。
・その他
胃潰瘍やがんから起こる出血や外傷による出血。骨髄で血液は正常に作られているのに、流動している血液中に送れないと貧血になります。
<治療法>
治療は貧血を起こした原因によって異なります。胃潰瘍やがんなどの出血から貧血が起きている場合は、それらの治療が必要です。再生不良性は、蛋白同化ホルモン療法や免疫療法を行い、ドナーが得られれば骨髄移植をします。貧血の中でも特に多い鉄欠乏性は、食事療法と鉄剤を服用します。
鉄分を多く含む食品にはレバー、大豆、貝類、プルーン、赤身の魚肉、海藻類、緑黄色野菜がありますが、特に動物性の食品には、吸収率のよいヘム鉄が含まれています。これらをバランスよく摂り、食事を抜かないよう1日3食しっかり食べます。
そして、食事で補えない分は、鉄剤を服用しますが、貧血が治ってもしばらくは服用を続けます。また、コーヒーやお茶は鉄分の吸収を悪くするタンニンが含まれているので、食後すぐは控えましょう。