歯の根っこの尖った所に袋ができており、その中には膿が溜まっています。これを「歯根嚢胞」と云います。そして、歯根嚢胞の出来る歯と出来ない歯がある事が分かっています。出来る歯とは、「神経が死んでいる歯」又は「既に神経を取った治療済みの歯」です。神経が生きている歯にはできません。
どうしてその様な歯に出来るかと云うと、歯の神経が入っていた場所もしくは死んでいる神経に細菌が繁殖して膿ができ、その膿が歯の根っこの方に押し出されていきます。そして歯の先から袋が出来て、そこにどんどん膿が溜まっていくのです。この袋の事を嚢胞(のうほう)と云いますが、嚢胞は骨を溶かしながら大きくなっていきます。
嚢胞だけでなく歯の根っこにも細菌が繁殖しています。この歯根嚢胞は骨の中に出来るので、目で確認する事が出来ず、レントゲンでしか分かりません。痛みなど症状がない場合には、他の歯の治療の為にとったレントゲンで、嚢胞が出来ているのが分かったという事が多いです。
なお、歯根嚢胞と云う名前はあまり知られていませんが、病院では日に何人も診る事もあり、決して珍しいものではありません。
<症状>
噛むと痛む、歯が浮いている様な感覚がある、寝ている時に痛む(疼く)、歯茎におできが出来るといった症状があります。また、症状が無い場合もあります。ですが、症状が無いからといって嚢胞が小さい訳ではありません、大きい場合もあります。
逆を云えば、急性であれば嚢胞がほとんど見られなくても、症状が酷い場合があります。「症状の体感=実際の症状の程度」という事ではないのです。なお、症状が無いからといって、嚢胞が小さくなるわけでも、自然治癒するわけでもありません。
<治療法>
●根管治療
歯のかぶせものや詰め物を外し、死んだ神経、細菌や汚れを取り除いて、その空間に消毒薬を入れます。この治療は膿の袋が小さい場合に行います。
●歯根端切除術
嚢胞が出来ている歯の根っこに近い歯肉を切り開き、嚢胞を取り出す為に周りの骨を削ります。そして嚢胞を取り除き、歯の根っこを切除します。その後は切り開いた歯肉を縫合します。嚢胞を取り出した後、その箇所には空洞ができます。
ですが、骨は再生していくので、時間はかかりますが、空洞は埋まります。空洞が大きい場合には、他の部位の骨を移植したり、人工のもので埋める事もあります。この治療は、根管治療では治らなかった場合や、かぶせものが外せない為に根管治療が行えない場合に行います。